48言目:仮想タイムスリップ

久しぶりのWBCが間近に迫り、盛り上がってきた。
そのなかでも注目を浴びている選手の1人が、ダルビッシュ投手。
宮崎で行われているキャンプでも、ダルビッシュ投手の存在感の大きさを語るニュースが連日報じられている。

結構前の話のようだが、そんなダルビッシュ投手の考え方が話題になっていたので紹介したい。
ざっくりとこんな話のようである。

2006年、プロ2年目で20歳だったダルビッシュ投手は、ある日の試合で大量点を奪われ降板。
その夜、滞在先のホテルで、「このままではダメだ。何か変えないと」と危機感を覚えた。
そのときに、「今までの20年の人生が一瞬だったから、40歳までの人生も一瞬じゃん」と思ったそうだ。
そこで彼は、
自分は40歳になってクビになって、仕事がなくなった。そしてそこに神様が現れて「1回だけチャンスあげるから20歳に戻っていいよ」と言われ、20歳に戻った。それが今の自分だ。
と思うようにしたらしい。
40歳から20年タイムスリップさせてもらえたなら、絶対努力するに決まっている。
次の日から気持ちを切り替え、行動もすぐに改めた。
そこからの活躍は言うまでもない。
先日の契約更改で、ダルビッシュ投手はメジャーリーグでは超異例といえる42歳までの長期契約を結んだ。40歳になってクビになる未来を見事に覆した。

ちなみに、どうでもいいが私の話もしてみたいと思う。
今から7年前に発行された、九大野球部100周年記念誌に寄稿した文章のなかで、私はこんなことを書いている。

九大野球部での4年間は、10年分に匹敵するくらい濃密な期間だったと感じています。

何が言いたいのかよく分からないが、当時の自分の気持ちは、
今後10年分の寿命を引き換えにしてでも、もう1回九大野球部での4年間をやり直したい。
というものだった。
我ながら、あまりに未練がましくて気持ちが悪い。
ダルビッシュ投手のようにタイムスリップした想定で自らモチベーションを上げるのならまだしも、本当にタイムスリップを願ってしまうようでは目も当てられない。

野球部を引退してからは、特にやりたいこともなく時間を浪費する毎日であった。

空海にだって、歴史の表舞台に出てこない【空白の7年間】がある。
今の自分も、歴史の表舞台に出ていない、まさに空白の期間なのである。
いつか歴史の表舞台に立てる日が来る。それまで頑張ろう。

とか何とか、訳の分からないことを考えて、結局ダラダラと過ごした。
いよいよ追い込まれるまで、なんと無駄な時間を過ごしたものか。
貴重な20代の時間を、なんと勿体ない過ごし方をしてしまったものか。

やはり一流のダルビッシュ投手と三流の私では、考え方の次元が根本的に異なる。
今からダルビッシュ投手と同じピッチングはできないかもしれないが、ダルビッシュ投手と同じ考え方はできる。
ダラダラと訳の分からないことを考えている暇があったら、今の自分は、オジイサンになって後悔した自分がタイムスリップして戻ってきた自分だと思って、もっと頑張ろうと思う。

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